「えー。本日は緊急座談会の続編としてね。お送りします。おはようございます、こんにちは。そして、こんばんは。…………比嘉」
ぱかっと片山が丸めた書類で頭を叩く。
「間がなげぇ!!」
しれっとほかの面々はチューハイを飲んでいる前で、比嘉が頭を抱える。思い切りひっぱたいた片山がおまけとばかりに比嘉の頭をぐしゃぐしゃにかき回す。
「……いったいな~。もうやめてくださいよ。いい年して。ぐしゃぐしゃになっちゃったじゃないですか」
「さっさと始めろ!」
「わかりましたよ。さて、今回はね。鷺坂元室長が非常にご立腹ということで、私が、進行をしているわけですが」
ずぅーっと水割りを啜った鷺坂が心底不機嫌そうな顔で眉間に皺を寄せている。
「鷺坂元室長?そこのところを……」
「怒るに決まってるだろ!」
だん、と勢いよくテーブルを叩いた鷺坂にしん、とその場が静まり返る。
「あの広報室のドアから踏み出して俺たちの方へ近づいてきてくれたのは稲ぴょんのほうなんだよ。初めはすごく、ガツガツしてさ。俺だちだってむかつくことも多かったけど。でも彼女は変わったんだよ。空井に出会って」
それは誰の胸にも大きく響く。空井だけではない、誰もが、リカが現れたことで何かが変わったのだ。
「人生は出会い。その出会いを生かすもダメにするのも本人次第なんだけどさ。まだあいつは何もやってないだろ?なのに、自分から放り出すなんて許せるか!」
一度は掴みかけた手を何度も離しそうになったことはその場にいる誰もが知っていた。
槇の皿の上の冷えた焼き鳥と、温かいものを取り換えた柚木が怪訝な顔で鷺坂を見る。
「そんなに元室長が怒るって、あいつなにやったんですか?稲葉のこと、泣かしたとか?」
ますます鷺坂の眉間に皺が寄る。
比嘉は、その顔を見て、口を真一文字に引き結んだまま、目を泳がせた。
「……比嘉~?」
「いえっ、それは私の口からは……」
「比~嘉~!!」
比嘉の首を絞める片山を槇と柚木が止めにかかる。
ぽつりと、鷺坂が呟いた。
「まっすぐなのもいいけどね。まっすぐすぎて大事なものを見失っちゃいかんだろ……」
「どういうことです?」
真顔になって鷺坂の顔を見つめた柚木に、ふう、とため息をついた。