FLEX25*~好きすぎてこまるんだ

二つ折のカードを開くと、クリスマスツリーが立体になって、おや、と思う。見開きの片側にリカのメッセージが書かれていた。

『大祐さんへ
クリスマスに特別な思いはないけど、それでも一緒にいたい気持ちは私にもあるので、代わりにカードを送ります。
今夜も空は繋がっています。
メリークリスマス。
リカ』

かさ、とカードを持つ手が暖かくなった気がする。
目を閉じた大祐は、目の奥に滲んできたものが落ち着くまでしばらく、そのままで動きを止めた。

エアコンの音だけが響いていた部屋の中に携帯の振動音が響く。

「もしもし」
『大祐さん?』
「うん。もう家?」

落ち着いたリカの声を聴いているだけで今すぐ抱きしめたい気分になる。

『ん、さっき帰ってきました。今日はすごく寒いよ。雪が降るかもって言われていたけど、ホワイトクリスマスにはならないみたい』
「そっか……」

妙に言葉少なな大祐に、電話の向こうで何かを感じたらしいリカが少しの間をあけて心配そうな声を出した。

『大祐さん、どうかした?疲れてる?』

―― ……違うよ。リカが好きすぎて、今すぐ会いたいだけなんだ

そう口に出すはずが、溢れそうになった感情にうん、とだけ呟いた。
電話だけで伝わらないのが切ない。

『大祐さん、もしかして今、泣きそうになってる?』
「!……そんなことないよ」

どうしてわかるの。

声にならない声に、リカが答えを返す。

『嘘。大祐さんが泣いてるところ、たくさんみてるからわかります。リアルに撫でてあげることはできないけど、気持ちは撫でてますよ』
「そんなに俺、泣いてないよ……、たぶん」
『たぶんって……』

耳元で聞こえる微かな笑いも、ただ幸せを願っていた二度のクリスマスとは全然違う。

「……カードが届いたよ。ありがとう。リカが好きすぎて、どうしていいかわからなくなっただけなんだ」
『子供っぽいことしたでしょ?』
「子供っぽくなんかないよ。すごく嬉しい。そばに置いて寝るよ。リカの代わりにね」

照れ臭いのか、私はそんなに薄っぺらくありません、と電話の向こうで拗ねたような声が聞こえる。

―― リカがカードみたいに持って歩けるなら懐にいつも入れて歩きたいと思うよ

「お正月は一緒に過ごせるかな?」
『私はカレンダー通りだけど、大祐さんは?』
「俺もだよ。だから一緒にいられるね。リカのおかげで、こういう約束が楽しみなんだって初めて思った」

嬉しそうな声に本当だよ、と繰り返す。
大祐は、壁にかかったカレンダーに目を向けると、あと数日の休みが今から待ち遠しいなんて、初めてだと思った。

投稿者 kogetsu

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