何度も胸をこねまわされ、背中にほおずりされている感覚は、どういえばいいのだろう。素肌に触れる、新しいブランケットがまた気持ち良くて、リカは快感に身を任せようとした。
それもわざとなのだろう、と思っていたが、時々腕が止まる。止まってはまた動き出すを繰り返して、リカの肌を何度も炙っていく。そのうちに、するりと下着ごと部屋着のパンツを下げられて、膝の少し上のあたりで止まると、自分自身でも濡れていることを否応なく感じた。
「ん……、ふぁ……。大祐さん……」
「……ん、リカ……」
触られる。
そう身構えていたリカは、再び動きを止めた大祐に違和感を感じた。
―― あれ……?
すう、すう、と背後からは変わりなく寝息が聞こえている。
―― え、嘘……。まさか寝たままで私に触ってたの……?
こちらはすっかり目を覚ましてしまい、恥ずかしいことにじわじわと動いてきた手にすっかり感じてしまっている。
でも、背後では再び深く眠ったらしく、もうさっきのように動くことはない。
―― こ、これって私がまるでしてほしかったみたいじゃない!
客観的に見れば、大祐は普通に服を着たまま眠っている傍らで、ブラも部屋着も片腕に通しているだけ、下も膝のあたりまで引き下ろしている姿など、どれだけ欲求不満なのかと思えなくもない。
とにかく、恥ずかしくて下を引き上げて、大祐を起こさないようにブラと部屋着を元通りにする。それから、そうっと起き上がると、ベッドを抜け出した。
「はぁ……。なんなの、あの無意識って……」
そのままで休むには少し躊躇われて、音をさせないようにバスルームに入ったリカは、まだ温い湯船を追い炊きにして、湯をかぶってから湯船に沈み込んだ。
しっかり体は反応してしまったことが何より恥ずかしくて仕方がない。先に湯を浴びて洗い流したが、なんだかまだ体の奥の方は疼いているような気がして、ますます羞恥を覚えてしまう。
寒いくらいに温かったが、あっという間にお湯は温かくなって、その時間が理性を取り戻す時間にもなる。
―― そうよ。別に抱き枕だと思ってるわけじゃないだろうし、さわり心地がいいっていっつも言ってくれてるからそういうことよ
自分を納得させるために自分に言い聞かせていることは十分わかっていたが、寝ているその人に触られて自分だけが興奮したなんてその事実に耐えられなかっただけだ。
風呂場のパネルに表示された時刻は、午前3時を回ったところだ。今からもう一度眠れば普通に朝起きられる。
なるべく水音をさせないようにバスルームを出て着替えると、水を飲んでから静かにベッドに戻った。
「ん……、リカ?どしたの」
ベッドに潜り込んだ気配で、目を覚ましたらしい大祐が、眠そうに片目を押し上げた。
「ちょっとトイレに起きただけ」
「……ん。おいで」
目を閉じて、リカを腕の中に確保すると、にこおっと嬉しそうに笑う。
ぽんぽん、と腕でブランケットを肩までくるみこんで優しくその背中を叩くと、安心して眠ってしまった。
―― もう……子供みたいなんだから
その笑顔を見ると、何とも言えなくなってリカも寄り添って目を閉じた。
その1時間後。
再びリカは起こされる羽目になる。
二度目はもっとひどかった。
再び部屋着をまくり上げられた時点で、今度はリカも目を覚ました。
「ちょ、ちょ……」
なんとか逃れようとして、も、さっぱり起きる気配のない大祐に勝てるはずもない。無意識だからこそ、的確に迷うことなくまくり上げた胸元に顔を寄せてくる。
頬を寄せて浅い胸の谷間にぴたりと張り付かれると、どうにもこうにも身動きが取れなくなる。
「大祐さん……?」
とんとん、と背中を叩いてみても、少しも反応がなくて、どうしようと思っている間に、再び動かなくなった大祐に諦めて寝ようとした。
が、するっと背中を撫でた手があっさりとホックをはずしてしまう。
――これ、本当に寝てるの?!
「ちょっと、大祐さん?……!」
どうしよう、と慌てていると、胸にちゅっと吸い付かれた。掌で直に胸を包み込んでちゅ、ちゅ、とキスが繰り返される。
「んん……っ!」
つい声を上げてしまってから恥ずかしくなる。なんとか離れなければ再びさっきの二の舞だと思ったが、しっかりと回された腕が逃がしてくれない。
「大祐さんっ、あっ……」
仕方なく起こすしかないと思って声をかけたのに、全く聞こえていないのか、胸にキスしていた大祐が頂に吸い付いた。じわっと胸から広がる感覚に、耐えられなくなって、押しのけようとして手で大祐を引き寄せてしまう。
ちゅく、と転がされるたびに気持ちよくて、吐息が漏れてしまう。
そして、しばらくすると、再び大祐が動きを止めた。
―― う、嘘でしょ……。このままでどうしろと……
胸には温かさがあるものの、これ以上動く気配のない大祐を何とか引きはがすしかない。もしこのまま寝てしまって、大祐の方が先に目を覚ましたらと思うとそんな恐ろしいことはできるわけがない。
「ふっ……く」
とにかくぐいっと大祐の肩と頭を押して、胸から大祐を引きはがすと、ブラも止めていないまま、とにかく部屋着を引き下ろした。
「冗談じゃないわよ……」
腰に回されていた腕もぐいっと押し返して距離を開けようとするのに、逆にと引き寄せられてしまう。眠っている大祐と、起きているリカの攻防という笑うに笑えない状態がしばらく続いた後、なんとか逃げ出したリカは、ベッドを抜け出した。リカと一緒になってから大祐が買った簡易ソファに転がった。
「はぁ……。眠いのに眠れないなんて……」
さすがに温かなベッドから抜け出しただけに、肌寒く感じて、ブラを直してから着てきたジャケットにくるまって横になった。
いくらも眠れないまま朝になって、起き出したリカはもう一度、風呂に入ってから着替えて丁寧に化粧をする。
そうでもしないと、この時間がむなしいやら恥ずかしいやらどうしようもない気分になりそうだったからだ。