リカの部屋にいるときは、あまりテレビをつけていることが少なくて、一人松島に帰った時には妙にテレビが恋しく感じる。
1週間遅れの番組を東京で見てしまう時の悔しさを話したら、いつの間にかそんな時間が増えていた。
「リカって、テレビ局の人なのにあんまりテレビ見ないね」
そう言った空井にむかってリカがくすっと笑う。
「大祐さんがいない時は見てますよーだ」
「えっ、そうなの?」
「うん」
リカの部屋にはHDDレコーダーとそのほかにブルーレイレコーダーがある。たまに録画しているものを見てもいいかと言われてみることもあるが、その時にちらりと見るタイトル数は確かにたくさん並んでいた。
ことん、と大祐の目の前に温かいお茶の入ったカップをおいて、大祐の隣に座る。
携帯を充電器につないだリカがタップして音楽をかけた。
「あ。これ、好きだな」
女性の柔らかい声が流れてくる。
その歌詞を聞いていると隣に寄り添っている愛しい人が言ってくれている気がしてくる。
「ほんと?よかった」
「どういう選曲?」
「んー……大祐さんと聞きたい曲、かな」
―― 可愛いこと言うなぁ
隣りに座ったリカの頭を引き寄せてそっと髪を撫でる。
「じゃあ、リカも言って?」
「え?」
「だってこの曲も言ってるよ?」
我ながらちょっとくさいかな、と思うが、たまにはこうしてねだるのもいいだろう。
リカの引き寄せた頭を自分の方へ向けさせると、鼻先に触れそうなくらい近い場所で囁く。
―― 愛してるって言って……
ほんの少しだけ目を見開いたリカが半眼を閉じると、そっと唇を寄せてくる。
触れ合わせただけの唇から伝わってくる言葉に嬉しくなって、わざと少しだけ離れると拗ねたのかふいっと顔を背けた顔を手を添えて引き戻すと深く唇を重ねた。
とてもこの思いを伝えるのは、言葉ではとても足りない。
耳をくすぐる柔らかい音楽が流れる中で、抱きしめてキスを交わして。
―― 愛してる……