五感で感じる*~R:眠りにつくまで

時計を見てそろそろ寝なくちゃと思う。
一人でいるときには、きちんと時計で動いているのに。

電話を切る間際にいつも大祐さんに言われる。

「早く眠ってね。朝、辛いでしょ?」

おかしいなぁ。そんなことないんだけど。
寝坊したこともなければ、寝つきも普通だと思う。

一人なら確かにそうなんだけど、どうしてかな。
週末大祐さんと一緒にいるときは、自分でも不思議なんだけど、なかなか眠れなくて、なかなか起きられなくなる。

「眠れないの?」
「なんとなく。大祐さん、眠っていいよ」
「うん……。眠くなったら寝ちゃうかも」

そう言いながら、寄り添っている時間が心地いい。シャンプーの匂いでもなく、洗濯の香りでもない。でも、寄り添っていると大祐さんの匂いだなと思う。

「大祐さん、香水とか使うの?」
「え?使わないよ。そんなのつけてたら基地で何言われるか……」
「そうだよね。でもなんか落ち着く」

なかなか眠らせてもらえないわけではなくて、自分が眠らなくてもいいのが本当。
その分、いつも朝は起きられないのも不思議。

ぴく、と目を覚ましたリカが隣を見ると、案の定、大祐の姿がない。
起き上がって、大祐の姿を探すと、シャワーから出てきた大祐がおはよ、と笑う。

「やっぱり起きたね」
「やっぱりって何?」
「リカ、一緒に寝てるといつまででも寝てるけど、俺が起きて傍にいなくなるとすぐに起きるなって。だから今日は実験してみたの」

実験てなに?と眠い目をこすってぺたりと定位置のソファに座ると、向かい合うように大祐が腰を下ろしてにこにこと笑っている。

「先に起きて、傍から離れたらリカが起きるかなっていう実験。そして実験は成功」
「あれ……。そっか。うん。そうね」
「実は、体温かなって思ってたんだけどそうでもないみたいなんだよね」

傍にいる肌の温度がなくなることで目が覚めるのかと思っていたが、起きるときにリカを包み込んで変わらないようにしても、いつも必ず目を覚ます。
なんで?と聞かれても、よくわからなくてぼんやりしてしまう。

「なんでかなぁ……」

面白がっている大祐が部屋にいると、自分の部屋なのに何かが違う。
同じシャンプーを使って、同じボディソープなのに。

どうせ寝ぼけているならとそのままぎゅっと大祐に抱きつくと、あやす様に受け止められた。

―― あ、大祐さんの匂い……

「まだ眠いの?」
「ううん。なんだか安心するのかな。大祐さんの匂い……」
「えぇ?俺、ニオイする?」
「うん。変な話じゃなくて、同じシャンプーで同じボディソープなのに何かが違うの」

すん、と自分の匂いを嗅いでもよくわからないらしく、首をひねっている大祐にううん、と頭を寄せて甘えてみる。

珍しいね、と言いながらも嬉しそうだから、まあいいか、とリカは目を閉じた。

投稿者 kogetsu

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