五感にざわめく*~S/O/J/S/K:大好きは秘密

最近、腕を組んだ時の大津君の腕が細くなった気がするの。
前は、ぽちゃっとしてて、掴んでるとふにふにって悪戯しちゃったんだけど、最近はあんまりそれができない。かわりに、ちょっと硬い筋肉が増えてるみたい。

「今日、ジムいってきていい?」
「うん。何時頃帰ってくる?」
「10時過ぎ、かな」

同棲してるわけじゃなくて、近所に引っ越しただけなんだけど、なんか奥さんみたいでいいでしょ?ってちょっと思ってる。
空井さんと稲葉さんの真似、じゃないけど離れてても、だいたいお互いの予定を知ってるからすごく楽でいい。

「わかった。じゃあ、あたしも早く帰れたらご飯作るね」
「うん。無理しなくていいよ」

お互いの仕事もわかってるから、遅い時間になることもなんてことない。
じゃあねー、と手を振ってフロアに戻る。

「稲葉さん、稲葉さん。聞いてくださいよ」
「何?」
「最近、大津君てば細マッチョ目指してるんですよー。ちょっとずつ細くなってきててかっこいいんです!」

顔も上げずに話を聞いていた稲葉さんが、はぁ?と考え込んでからそう言えばと頷いてくれた。

「確かに大津君、最近痩せたかも」
「そーなんですよ。わかりますぅ?」

私が細マッチョ大好きだって知ってるから大津君はダイエットをかねて、最近体を絞ってくれてる。その気持ちが嬉しい。

「もちろん、空井さんみたいにはいきませんけど、大津君もかっこいいんです」
「わかってるわよ。別に、そこに空井さん、出すことなくない?」
「だって、少しくらい稲葉さんに張り合ったっていいじゃないですか。女子力は私の方が上ですけど、仕事はまだまだ敵わないし、旦那さんはイケメン自衛官だし」

それは関係ないでしょ、というけど、稲葉さんはわかってない。
稲葉さんは、十分愛され女子なのだ。

私みたいな女は、私だけを大事にしてくれる人がほしいの。
無い物ねだりだってわかってるけど、仕事だって、忙しくて大変なのは嫌だけど、稲葉さん見てると、ものすごく真剣にやりたくなる。

最近、そんな稲葉さんがちょっとうらやましくて。
大津君がちょっと焼きもち焼いてた。

『俺より、稲葉さんの方が好きなんじゃないの』

冗談でしょ?って、あたしは笑っちゃったけど。
だって、稲葉さんはガツガツだし、気を抜くとすぐおばさん発言だし。こんな風に腕組めないでしょって言ったらちょっと困ったみたい。

『少しはダイエットの結果出てると思うんだけど……。珠輝の好きな細マッチョには遠いけど』

そんな可愛いことを言ってくれる人、いなかったもの。
だから、本当はちょっとだけ、あのふにふにした腕の感じが大好きだってこと、内緒にしておくの。

投稿者 kogetsu

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