FLEX149~雨の月曜日

日曜日の夜、少しだけ憂鬱そうな顔をしたリカが、何度も時計を見ながら諦めたようにいつもより少し早くベッドに向かう。

「あれ?リカ、寝るの?」
「うん。明日、ちょっとねぇ。気が重い会議があるの」

ばふん、とベッドに倒れこむようにベッドの上に乗ったリカは、しばらく動かずにじっとしていたが、しばらくして顔だけを大祐に向けた。

「ねぇ、大祐さん」
「んー?」
「大祐さん」
「何?」

ねぇ、と呼ぶ割に何か言おうとしないリカに、苦笑いを浮かべてテレビを消した大祐が、部屋の明かりを落としてリカが寝転んでいるベッドに近づいた。

「リカさーん。そのままじゃ眠れないよー?」

ベッドには入らずに倒れこんでいるリカの背中をとんとん、とたたく。ごろん、と横に転がったリカが、ベッドの上に起き上がる。

「はぁー!もう日曜の夜って、どうしてこんなに嫌になっちゃうのかな」
「嫌だ、嫌だと思うからだよ」

苦笑いした大祐がくしゃくしゃとリカの頭を撫でる。

「嫌だって思うのは今だけで、目が覚めて朝になったらきっと嫌だと思ってないよ?」
「そうかなぁ……」

きっと仕事中のリカしか知らない人が見たら驚くかもしれない。
ひどく弱気で、しょんぼりした様子は想像もできないだろう。

大祐に撫でられて目を閉じていたリカは、ぱちっと目を開けるとベッドの頭のほうへともそもそ移動する。
それにあわせて、大祐もベッドの中へと長身を滑り込ませた。

隣にリカの場所をあけておいて、片腕を枕にした大祐は珍しくごねているリカを見上げた。

「おいで?寝るまで話聞くから」
「……別に、聞いてもらわなくてもいいんだけどね」

仕方ないと渋々もぐりこんだリカはぐいと大祐の腕を掴んで引き寄せた。

「……大丈夫」
「リカだったら、大丈夫じゃなくても大丈夫にできるんじゃないかな」
「そんなこと言うけど……」

―― 弱気でも弱気じゃなくても、リカはリカだよ。いつものリカがやってることがちゃんと助けてくれるよ」

おまじないにもならないだろうが、大祐がそんなことを言っていると、納得したわけでもないだろうが、素直に目を閉じたリカは、大祐の肩先に頭を寄せて眠りについた。

どちらも週明けで、しかも雨だけに早めに起き出していた。

言葉が少ないのは、まだ眠気を引きずっているのと、休んでいた頭を仕事に切り替えようとしているせいもある。

それでもいつもと変わらない様子の大祐は、テレビで流れるニュースを眺めていた。

支度をしていたはずのリカの姿がふっと消える。洗面所に立ったリカは、寝起きで顔を洗っていたのに、もう一度、冷たい水を顔にあおっていた。

朝食の支度を黙って買ってでた大祐は、冷蔵庫の中から卵を取り出してさっとスープを仕立てた。

洗面所にいたリカは、気が済むまで冷たい水を浴びてからタオルで顔を拭った後、勢いよく自分の顔をパン!と叩く。

「よし!」

洗い流してしまった分も、もう一度化粧水をつけて部屋に戻ると、大祐が大きめのマグをテーブルに置いていた。

「な、何?」

どこか面白そうに笑っていた大祐をみてリカが怪訝そうな顔になる。

「気合い入れすぎてガツガツしすぎないでね」
「……~!しませんっ!」

くくく、と笑う声に、悔しくなって背後からタックルの様に抱きついた。

「大祐さんこそ、アマアマモードは置いてってくださいね!」

ごふっと盛大にむせた大祐にしてやったりと笑ったリカはテーブルのカップを覗いてやった、と声を上げた。

「スープ嬉しい。いただきます」
「……どうぞ。それで元気が出るならいくらでも作るよ」
「ふふ。魔法のスープ?」

肩をすくめた大祐の代わりに、今度はリカがくすっと笑った。

そんな雨の月曜日。

— end

投稿者 kogetsu

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