五感で見つめる&癒す*~M&Y:触らないで

非難を受けやすい仕事だってことは今までも嫌ってほど味わってきたから、どっかでまたかっていう気持ちはあった。
せっかく作ったPVをあんな風に言われて、関わった片山や比嘉や、空井が、どれだけ悔しいかと思うと、目を見張るような火消ができればいいんだけど、そんなこともできるわけなくて。

でも、本当に傷ついた顔で戻ってきた空井が、稲葉が担当を外れるって聞いた時は、こっちが泣きそうな気分だった。

どんな思いで、あたしたちの事を見ていてくれたのか、稲葉が作る物をみていればわかる。
だから、あたしたちもそれに応えたくて、頑張って来たのに、稲葉が今どういう立場に立たされているのか思うだけで胸が痛かった。

「あんたが泣いたってしょうがないでしょ」

二人だけの時だけは、いいかなって。
べそべそと泣き続けるあたしに、槙は隣にただ座ってた。

気が済むまで泣けばいいって言われているみたいで、我慢している分、二人でいるときだけは盛大に泣いた。
一度だけ、あたしを抱きかかえようとした槇にあたしは意固地になって、突っぱねた。

「なんで」
「あの二人はさ……。あと少し、一緒にいられたら、何かが変わってたかもしれないのに、あんなに傍で見てたらわかりそうなもんなのに、一緒にいられなくなったんだよ。あたしばっか、槙の腕に抱えられてられないよ」

おかしな理屈だってこともわかってる。別に関係ないと言われたらそれまでなのもわかってるけど、今は、自分だけが温かい場所で甘えさせてもらっているのが辛い。

呆れられるかと思ったのに。

ぽん、と頭を大きな手が押し下げて、あたしの顔を隠した。

「あっそう」

それだけ言って、隣にすとん、と座り込んだ槇は、それから好きに泣かせてくれた。
暖かい手もお互いの笑顔もなくした二人の代わりに何か少しでも力になれるように。

投稿者 kogetsu

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